子どもたちの食の安全を考える会・埼玉(コトショク)メンバーから
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現在、種子法廃止は違憲だと訴える裁判が行われていますが、その第4回口頭弁論で、原告である有機農家の意見陳述が行われました。
その内容がTPP新聞に掲載されていたので文字起こししました。
種子法廃止や種苗法改悪に対する有機農家の思いがよくわかります。
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他の方が問い合わせてくださりブログに掲載の許可を得ました。

TPP新聞vol.15(2021.10)より
「種子法廃止等に関する違憲確認訴訟」第4回口頭弁論における原告意見陳述

舘野廣幸氏
2021-10-04_20h46_54
※太字は管理人によるものです
私は栃木県下都賀郡野木町で稲作を主とする農業を営む専業農家。
すべての田畑で農薬や化学肥料を使用しない有機農業を行っている。

有機稲作12ha、有機小麦1ha、有機大豆1ha、他に有機果樹と自家用有機野菜などを0.3ha栽培している。自家所有農地は約3ha、他に集落内の引退した農家の農地や耕作放棄された農地など借り受けている。

労働力は、経営者の私と専従者の妻と常勤者の雇用者1名、農繁期のアルバイトや消費者、研修者の支援、田畑に住む生き物たちの無償の働きで賄っている。

有機農業とは、単に有機肥料を使用する農業という意味ではなく、
⓵化学合成農薬を使用しない、
⓶化学肥料を使用しない、
⓷遺伝子組み換え技術を利用しない
ことにより、環境への負荷をできる限り低減した農業のことである。


国は有機農業という存在そのものを認めてこなかった。
国が有機農業と有機農産物について正式に法制化したのは1999年の有機JAS法と2006年の有機農業推進法制定以降のことだ。
私や多くの有機農業実践者は、国や自治体からの支援もなく、暗中模索の状態で有機農業を実践してきた。
有機農業の技術開発には多くの時間と労力を要する。
本来ならば農水省の研究機関で開発して普及すべき技術だが、現在に至るまで在野の有機農業者が開発した技術以外には、ほとんど有機農業技術の研究開発が行われていないのが実態だ。

有機農業を行う上で重要になるのは、有機種子の確保である。
有機農業では、種子も化学合成された農薬や肥料を使用しない「有機種子」を用いることが原則になっている。
ところが、日本には有機種子を供給する体制がない。
有機種子の生産は、当然ながら農薬も化学肥料も使用せずに行わなければならない。
しかし、種子の生産は、一般の農産物の生産以上に病害虫の発生や雑草の種子の混入を徹底して避けなければならない。化学薬品に頼れないためリスクも高く、病害虫の発生を防ぐ圃場環境整備と人力による雑草の除去が必要だ。
結果として有機種子の生産費用は高額となり、ほとんど収益が出ない。

有機種子の生産流通が行われず、入手が困難であることは、有機農業の推進にとって桎梏となっている。このことが、2006年の有機農業推進法の制定以降も有機農業の生産が増えない大きな要因となっている。
種子法は廃止するのではなく、一般種子の生産に加えて有機種子の生産体制も強化した形で拡充すべきである。

現状の有機農業の生産者は、やむを得ず慣行栽培の種子や市販の種子を使わざるを得ないという状況だ。あるいは、有機農家同士の種苗交換や在来種の自家採種を行って種子を得ている。

ところが、悪いことに種苗法が改正され、自家採種は原則禁止となり、登録料の支払いや登録品種でない作物であること、または在来種であることの確認などが課せられる。

度重なる法改正で有機農業の生産者は。ますます困難な状況に追い込まれている。
米麦を中心とする主要な農産物の種子は大量に必要であり、有機農業の米麦でも同様だ。
早急に全国的な有機種子の生産供給体制を整備しなければならない。

多くの国民が望んだわけでもなく種子法が廃止され、農家や農業生産県からは不安の声が上がった。
安定した種子の入手ができないのではないかという不安だ。
安定した種子の確保ができなくなれば、次年度の安定した生産ができなくなる。
かといって農家が万一に備えて種子を自家採種で確保しようとすれば、自家採種を原則禁止とした改正種苗法が立ちはだかる。
国民の生命維持の基本である種子を国家が保障し確保供給しなければ、だれが国民の生命を守るのか。

2018年の種子法の廃止以降、都道府県では「種子条例」を制定する動きが起きて、いくつかの県では条例が制定された。
しかし、それぞれの県によって内容が異なり、生産者は混乱している。

栃木県では県の担当者によれば、種子法が廃止されても今までと変わらずに種子の生産が行われるとのことだが、根拠となる国の法律も予算措置もなく、どのように種子の生産が担保できるのか。
2019年に栃木県が制定した種子条例(「栃木県奨励品種の優良な種苗の安定供給に関する条例」)では、県は以前のような種子の生産計画や審査、品質管理への責任をなくし、業者委託の許認可とする内容になっている。これでは「安定供給」が危ぶまれることになる。

案の定、早速に異変が起こった。
「種子法」廃止以前には栃木県から配布される水稲の原種価格が1kg当たり465円だったものが、本年3月には民間稲作研究所に届いた原種の請求価格では1,548円となり、3倍以上の高値となった。
値上げ理由について栃木県の担当者に説明を求めたところ、「原種生産にかかる人件費と機械設備の更新費用のため」という回答だった。
特に原種の生産量や生産方式に大きな変更があったわけでもなく、異常な値上げが行われるのは種子生産に対する国からの予算の交付がなく、県の農業試験場は、費用の負担を種子代として生産者へ転嫁しているためだ。
原種価格が高騰すれば、種子価格も上がる。

特に種子を大量に必要とする米麦の生産者は、コメの販売収入が低下する中での種子の値上げは、農業の衰退に拍車をかけることになる。

人類の生存を支えてきた農作物の種子は、私たちの祖先が努力と改良を重ねてきた結果として今日に受け継がれてきたものだから、単に農業生産のための材料というだけでなく、植物の遺伝情報と歴史の情報が詰まった貴重な知的財産でもある。

それぞれの地域に対応して、独自に進化してきた在来種子は特に貴重な生物であり人類共通の文化遺産でもある。
こうした種子の公共的役割を考えれば、種子を保護し主導・監督する主体は、国が法的な整備を行って責任をもって担うべきだ。
種子を企業ビジネスに託すことは、種子の持つ本質的な価値が歪められたり失われたりする恐れがあると危惧している。


国を主体とする公的な機関が種子を保全し供給することは、国民の生存と生活の安定を保障するための国の当然の責務だ。
種子法を廃止したことは国が国民の生存と生活の保障を放棄したことになる。
種子法の復活は単に前法の再現というものではなく、より充実した内容に改良して制定すべきものと考える。
新たに「有機種子の生産振興」や「在来種子の保全活用」などの条項を加えた、新しい種子法を早急に制定することが、国民や国家のために必要だ。

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コメント欄より

「種子法廃止違憲確認訴訟」にお集まりください。10/15(金)11:00~
東京地裁103法廷、第5回口頭弁論
10:00~正門前集会
10:30~傍聴券配布
13:00~報告集会、衆議院第2議員会館多目的会議室