2020年10月28日(水)22:00~
コロナ後の豊かな暮らしとは?見直される“小さな農業”
2020-10-28_01h25_10

いま、大規模集約型ではなく、家族規模で営む中小規模の“小さな農業”が注目されている。コロナ禍で食への関心が高まった消費者と、SNSやインターネットなどを介して双方向のつながりを築き、環境や健康への配慮から農薬や化学肥料を使わず育てた野菜を届けたり、野菜のおいしい食べ方など“農家の知恵”を教えたりして、利益を得る農家が支持されているのだ。こうした農家に共通するのは、必要以上に儲けを追求しない持続的でワークライフバランスのとれた暮らしを求めていること。価値観の変化が後押ししているのだ。こうした動きは、世界でも起きている。国連は、家族によって経営される農業をあらためて見直し、2019年から10年間を「家族農業の10年」とし、その保護と支援の推進を呼びかけた。
“小さな農業”は、日本農業の未来を切り開くのか、考える。


※放送から1週間は「見逃し配信」がご覧になれます。こちらから ⇒https://www.nhk.jp/p/gendai/ts/WV5PLY8R43/

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食の安全を考えていると、農業のあり方も利益だけを追求する大規模化には、安全性、多様性、環境への影響など様々な負の側面が見えてきます。
国連では2018年「小農の権利宣言」が採択されましたが、日本は棄権しています。

◆「小農の権利宣言」とは? その意義と乗り越えるべき課題
農業とITの未来メディア「SMART AGRI(スマートアグリ)」
https://smartagri-jp.com/agriculture/367 


権利宣言のなかで、特に注目されるべき条文としてよく挙げられているのは次のようなものだ。
    • 自らの食料や農業に関する政策や制度を自ら決定する権利である食料主権(十五条)
    • 適切な生活水準を維持できる価格で生産物を販売する権利(十六条)
    • 自家採種を行う権利、手頃な価格で種子を手に入れる権利(十九条)
さらには女性差別の撤廃(四条)、農作業の安全(十四条)、教育などの権利(二十五条など)といった幅広い分野において、家族農業や地域農業を守るために必要な権利について言及されている。


ではなぜ、日米欧をはじめとした先進国は、この宣言に反対するのだろうか。

アメリカの政府代表は、「個人の権利が優先されるべき」との反対表明を行ったといわれる。ここでいう個人とは、決して農家を指すものではない。大企業における企業利益を守ろうという意図に基づいたものである。

一方、日本の外務省は棄権した理由として「農村の人々の権利は既存の仕組みの活用によって保護される。固有の権利の存在があるかについては、国際社会での議論が未成熟」と説明しているという。

これらはつまり、農業経営を営む大企業にとって、地域に根ざした伝統を守り続ける家族農業の権利を保証することは、(大企業による)農業発展において阻害要因に過ぎないということを示唆したものと受け取ることができる。非常にわかりづらい日本の棄権理由にいたっては、アメリカの意見に追従するための方便とみる向きが大半だ。

権利宣言に反対あるいは棄権した先進国は、現地の農業開発や農地投資、貿易などを通じて途上国とのビジネスを抱えた国ばかりだ。小農の権利を完全否定するまでではないものの、農業における主権を小農に渡してしまうことでビジネスが大きく後退するのを危惧しているというのが、偽らざる本音といえよう。
経済効率のみを考えた農業開発では、生物多様性に適した環境やそこで働く人々の人権を犠牲にする状況に陥りやすい。
大型農機や最新の農薬など、科学技術によって社会課題を解決しようとする考えと、自然と人間の調和に根ざした考えとが真っ向から対立する格好だが、これまで虐げられてきた弱者の立場である小農の訴えが国際的に認められ、権利宣言にまで至った意義は大きい。
世界の農業の潮流が、小農を重んじる流れに明らかに変わり始めたことは、家族経営の農家が大半である日本においても真摯に受け止める必要があるだろう。