報告:ガタコさん

「コトショク」について                                                                                                                

2019年11月2日の埼玉リレーカフェ、山田正彦氏講演「売り渡される食の安全ー子どもたちのためにまずは知ることから」を機に、食の安全とそれを支える農業の問題に危機意識をもった数名が集まり、「日本の種子を守る会」の勉強会に参加するなどして、地元埼玉からできる事を模索し始めました。
そして今年に入って「子どもたちのために食の安全を考える会・埼玉」(通称:コトショク)を立ち上げました。
コトショク-ロゴ
https://kotosyoku.wixsite.com/mysite

種子法廃止(2018年4月)に続く種苗法改正案が国会に上程されている今、食の安全と農家を守るために、まず県議会に「種苗法の改定に関する意見書を国へ提出することを求める請願書」を出しました。

こちらのニュースに全文が掲載されています。

◆種苗法改定への意見書を国提出求め埼玉県議会に請願
JAcom 農業協同組合新聞
https://www.jacom.or.jp/nousei/news/2020/02/200225-40486.php

そして、今この事態を伝えるために、各メディアに働きかけています。
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世界では、フランス・ドイツを始めとするヨーロッパ各国、アメリカ、そしてお隣の韓国でも、遺伝子組み換えやゲノム編集された種子・農産物・食品の規制を国や民間レベルで強めて、更に有機農業を推進する方向に舵を切り換えて来ています。
現在、それと真逆の日本の農業政策に、強い危機感を覚えないではいられません。

「種苗法改定」を理解することは、今の日本の食の安全を支える農家が直面している問題点を理解することになります。
2月20日に衆議院第一議員会館 大会議室の集会の要旨をまとめました。


「日本の種子を守る会の緊急院内集会
 ー 種苗法改定の論点整理と今後についてのの討論会」

当日の動画

http://twitcasting.tv/humansystem/movie/594634122

http://twitcasting.tv/humansystem/movie/594641598

①農作物(米・麦・大豆・野菜・果物等)の種子を作付けする毎に、これからは農家は余分なお金を支払わなければならなくなり、 営農が困難になる。

   登録品種(新品種として育成者権を保護するために登録されているもの。有効期限は25年)でもこれまでの種苗法では、農家は収穫 物の一部を次期作の種子として利用することが認められていた(「種苗の自家増殖」が認められていた)。

今回通常国会に上程されている改正案では自家増殖(自家採種)が原則禁止されていて、許諾料を払えば自家増殖出来る内容になっている。

許諾手続きの煩雑さやこれまでになかった許諾料の負担で農家の営農意欲は削がれるばかりか、離農につながりかねない。

農水省は品種登録されていない一般品種(伝統在来種、有効期限切れの登録品種も含む)は自家増殖できるとしているが、米を例にとっても、収量が多くて食味がよい米は登録品種に移行 しやすい。従って「ゆめぴりか」や「つや姫」等、登録品種になっているものが多い。 実際に米(コメ)農家はほとんど登録品種を使っている。

因みにいちごの「あまおう」も登録品種。
2017年に農業競争力強化支援法が施行されてから、登録品種は増加し、もうすぐ396品種にもなる予定。伝統品種でもあるエゴマの何百種もある品種のうち3種類は品種登録されているし、安納芋もしかり。このように伝統的在来種がいつのまにか民間企業の登録品種にされてしまう可能性もある。

農家の経済的負担は増えるばかりで、本来守られるべき農家の種子の権利が守られない。

②国や自治体レベルで伝統的在来種を保護する法律が制定されていない。
そのため、自家増殖で在来種を栽培してきている農家が、登録品種の育成者権を持つ民間企業に特性表を使って訴えられた場合勝ち目がない。
このことは農家の自家増殖意欲を削ぎ、種子の多様性の維持が難しくなる。

資金力をもつ企業にとって、登録品種の特性表を作成することは容易である。
しかも改正案では、登録品種の育成者権の侵害として農家を訴えた場合、この特性表を使って判断することになっているので、明らかに企業側に有利である。

農家は在来種あるいは登録品種とは全く別の物を栽培していても、年月とともに変異すれば特性表と同一と判定される可能性は高まる。伝統的在来種がジーンバンク等の施設で保全され、データが伝統的在来種の特性表にまとめられていれば、不当な訴えを退けることができる。

種子の多様性を維持していくためにも、ジーンバンクが各地に作られ、国や自治体レベルで伝統的在来種を保護するための法律が制定されることが喫緊の課題である。

③ゲノム編集された種苗が、表示なしで流通して在来種との交雑が起きると、農業植物遺伝資源に壊滅的な影響を与えることなる。このようなことが起こらないようにする法案が盛り込まれていない。

ゲノム編集も遺伝子組み換えも、安全性が確認されないまま、植物種苗も食品も世界の市場に出回っています。

予防原則をとって規制をかけている国が大多数の中で、日本は、ゲノム編集の表示も無く、遺伝子組み換えの表示も2023年には実質的に無くなりそうな状況です。

今回の種苗法の改正点には、このような状況を改正する項目はなく、(登録品種の)育成者権者の利益を守る点に絞って、むしろ小規模農家を追い詰める内容になっています。

育成者権者というのは、米・麦の種苗に限っていえば、これまでは都道府県と国で80%を占め、野菜や果物を含めても50%が国と都道府県とのことですが、種子法の廃止(2018年4月)によって、これからは国や都道府県に代わって大企業(三井化学や住友化学、日本モンサント等)参入の道が開かれてしまっています。

登録品種の海外流出を防ぐためとして、農家の自家増殖を原則禁止にする改定理由の説明は、農林水産省からは一切なされていないそうです。

しかも侵害立証を容易にするための特性表の活用は、すでに言及した通り農家を追い詰め、育成者権者を一方的に利するものです。

つまり小規模農家の種子の権利を守り、国民の食の安全を守るという視点を全く欠いた、改正(?)内容になっています。

「コトショク」こと「子どもたちのために安全な食を考える会・埼玉」は、学校給食を安全な食材のものにしたいという観点からスタートしましたが、安全な食材を提供する日本の農業がまさに危機的状況にあることを知り、先ずは県議会に請願書を提出し、メディアに訴えるなど、ひとりでも多くの人に食の問題を一緒に考えてほしいと切に願っています。