■南アルプス100年で砂漠に 地質学者松島信幸さんに聞く
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●リニアトンネル中止を 風船に穴をあけるようなもの
 JR東海が強引に進めるリニア中央新幹線計画。南アルプスにトンネルを通す危険に警鐘をならし、「今からでも遅くない。リニア計画の中止・見直しを」と訴える、地質学者の松島信幸さん(88)=長野県高森町=に聞きました。(嘉藤敬佑)

●地質調査もせず
---南アルプスの地質調査を40年にわたってされたんですね。
 私が高校を卒業した頃、赤石山地(南アルプス)は、地質学的には暗黒地帯で、成り立ちがよく分からなかった。そこで天竜川から富士川へ、長野県富士見町から静岡市へと、横断と縦断を繰り返し地質調査しました。
 南アルプスは、太平洋の底に堆積した地層がおしあげられたもの。太平洋側はマイナス5000メートルの南海トラフから始まっています。海底から8000メートル級の山が連なっていると考えてください。日本列島で、これほどの主峰をもつ山はありません。文字通り、日本の屋根です。
 そして大事なことは、山は生きている、動いていることです。海洋プレートの衝突によって成長を続けているのです。国土地理院も高さの訂正を発表しています。
 地盤は山梨県側ほど新しく、伊那谷側ほど古い地層でできています。いくつもの断層があり、古い地層の上に新しい地層が乗っているところもあります。
 リニアは、この複雑な地層を全部横断するわけです。それなのに、JR東海は地質調査もせず工事に入った。エ事前に出されたパンフレットには一般論が書いてあるだけ。山を歩いた地質調査はしていません。調査は工事業者任せです。

●致命的な打撃に
---大井川の水枯れ問題でも、JR東海を批判されています。
 JR東海は導水路トンネルで大井川へ地下水を戻すとしています。しかし、南アルプスをトンネルで貫通させれば、山体を保持している高圧の地下水が永遠に流失してしまい、100年とかの時間をかけ、山が砂漠化します。取り返しのつかない、決定的な誤りを犯すことになります。3兆円もの財政投融資の投入など経済優先で、貴重な原生林が破壊されることは考えていません。山がなぜ高くなっているか。ものすごい水圧なんです。地質が硬いからではありません。山に穴をあけることは、風船に穴をあけるようなもの。高圧の地下水が噴き出し、止まりません。
 JR東海は、トンネルを掘る業者が対応するだろうと丸投げ。トンネル業者は掘れると言います。技術を駆使すれば穴をあけることはできるかもしれません。しかし南アルプスの豊かな森林資源に致命的打撃を与え、山を砂漠化することがあっていいのでしょうか。

●品川出たら断層
---もう一つ、地震の問題も指摘されています。
 仮にトンネルができたとして、乗客を安全に運べるのか。地震はいつ起きるか予知できませんが、リニアは地震で動く破砕帯や伊那谷活断層帯を通過します。だいたい、品川を出ると、いきなり首都圏地震の震源になるかもしれない断層があります。さらに、東海地震の震源域も近い。
 JR東海は、地震の揺れを検知して、直ちにリニアを止めるといっていますが、これは遠くで起きる地震に対してのことです。直下で起きる地震のことは一言も触れていません。停車する前に、崩れた山に突っ込んでしまいます。
 トンネルが崩壊しなかったとしても、脱出口や出入り口が破壊されるかもしれません。大鹿村では、小渋川を橋で渡りますが、村民は橋をかけるのは危険だ、今でも崩れているからと言っています。大井川の水枯れでも、流域の多くの人が心配しています。ところがJR東海はすべて無視しています。
 南アルプスの原生林を破壊し、土砂災害を引き起こし、人命にも被害が及ぶようなJR東海の暴挙を許していいのでしょうか

2009年の河本和朗氏へのインタビュー記事
◆リニア新幹線の南アルプスルートは安全か 
 日経 xTECH(クロステック)
https://tech.nikkeibp.co.jp/kn/article/knp/column/20090701/533704/