報告:スーパーポテ子さん

福島原発事故から8年
子どもたちの甲状腺癌はどうなっているのか?
0309
◆事故直後、活かされなかったSPEEDIと安定ヨウ素剤

緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム「SPEEDI」のデータが停電のためすぐに福島に伝わらず、その後もしばらく公開されなかった。
(その後自民党政権になり、これを活用しない方針に変わったのは、このデータが役に立たないとか国民を混乱させるとかいう理由ではなく、被害が大きかった時、事実を隠ぺいしたいからだったのでは?)
また、安定ヨウ素剤が備蓄されていたのに、実際に服用したのは一部の人たち。
特に飲まなければならなかった子どもたちには「よくわからないものを飲ませていいのか」と迷い、飲ませなかった親も多かった。
放射性物質がどれほど大気中に放出され大気や水を汚染したか、今となってはわからない。
日本では汚染牛乳は廃棄したが、水道水は汚染したまま各家庭へ。
大気中の放射性ヨウ素も防げず、吸入…


甲状腺がんの検査

国が行わないため福島県が始めた「県民健康調査」だが、事故当時年齢は5歳以上しかいないとしていたのに4歳の子がいたことが判明したり、経過観察後にがんと診断されても集計されなかったりと、データは正確ではない。
いったい何人が甲状腺がんになったのか不明である。
一巡目検査でがんが見つからなくても二巡目で見つかることもあり、通常のがんの成長速度をはるかに上回っている。
成人の例に比べ、より慎重な治療、長期の経過観察が必要である。
にもかかわらず2018年の「甲状腺検査評価部会」で、大阪大学の高野徹氏は検査縮小を主張した。
いわく「エコー検査をするから小さいものまで見つかってしまう。甲状腺がんで死ぬのはまれ。がんと診断されたくない人の人権を守るべき」等々
それに対する反対意見ももちろんあったが、学会ではほとんどの人が当たらず触らずの態度。ある医師は「何か意見を言ったら仕事ができなくなる。自分がいなくなったら患者の子どもたちがかわいそう」と言った。
今では、福島の甲状腺がんについて語ることは福島差別になると非難の的になり、脱原発派の間でさえタブー視されることもある。
だれも責任を取らず、データや証拠を残さず、被害者を対立させ、疲弊させ、あきらめさせる。水俣病と手口が同じである。


内部被ばく

セミパラチンスク核実験場(現カザフスタン)近くの村で「死の灰」を50年前に浴びた住民の血液を調べたところ、被ばく後3年で消えるタイプのリンパ球の染色体異常が認められた。
低線量被ばくの場合、外部被ばくによって健康障害が起きないレベルでも、内部被ばくによって健康障害が起きる可能性がある。
カザフスタンで行われた動物実験(日本では禁止されていてできない)によって、外部被ばくより内部被ばくの方が20倍も健康影響が大きいことが分かった。
2018年3月のNHKスペシャル「被爆の森」で、野生のサルを調べた東北大学の福本学名誉教授は言う。

すごく複雑な異常が起こっている。
野生動物でここまで出るのは驚いた。
未知の世界に入り込んでいるということ。
まだまだ野生動物の体内には多くの放射性セシウムが残留している。
そういう意味で事故としては過去のものだが、被ばくは現在進行中だ。


健康と命を大切にする社会であるために

農薬、タバコ、環境ホルモン、化学物質、遺伝子組み換えなどに気をつけるのは当然。
その一環として、放射能、被ばくも少ない方がいい。
そのためには過去から学び、今できることをする。
知識を学び、情報を得る。
力を合わせる=協同
意見表明(SNS、メディア、選挙)
防ぐ(廃炉)⇒再生エネルギー支援
備える(水、現金、ヨウ素剤)


新安全神話

事故後、除染してそこに住み続けることを県民が受け入れた。
健康被害は大したものではない。原爆被爆国の日本だからこそ、原発事故後に「大丈夫」と発信できる。次の事故があっても避難せず、除染してそこに住み続けることが経済、社会的にもいい…
「原発は事故を起こさない。絶対安全」という神話は崩れ去ったが「事故が起きても大丈夫」という新しい神話が!


「原発はエネルギー問題じゃないんだよ。人権問題なんだよ!」

敵を恐れることはない…敵はせいぜい君を殺すだけだ
友を恐れることはない…友はせいぜい君を裏切るだけだ
無関心な人々を恐れよ…彼らは殺しも裏切りもしない。
だが、無関心な人々の沈黙の同意があればこそ、地上には裏切りと殺戮が存在するのだ 
(ポーランドの作家ヤセンスキー)

悪魔が生き延びるにはただあなたたちのような善良な人々が何もしないでいればいいだけなのです 
(ガザの医師、イゼルディン・アブエライシュ)

過去に目を閉ざすものは、現在にも盲目になる 
(ワイツゼッカー元ドイツ大統領)

現実を見ない人は未来に盲目である 
(ショートフィルム「blind」より)

安全と安心は違います。
安心できないときは、自分の心のままに従ってください
(元東芝原子炉設計部長)


小学生のお子さんと参加していたお母さんからの質問

学校で、「放射線は安全」「風評被害をなくそう」というパンフレットが配られている。こういう話を聞くと、どちらが正しいのか、どう子どもに教えたらいいのか困ってしまう。

牛山医師の答え

事実は事実としてしっかり見なければならない。被害を小さく見せ、福島は安全だというキャンペーンは、福島の人たちを分断しようとしている。


感想

牛山医師は相模原在住ですが、事故当時、子どもが小学生と中学生だったそうです。
子どもの学校の校庭の土を集めて測ると2700ベクレルという高い数値が出て、慌てて校長に「除染してください」と頼んだら、「うちだけがやるわけにはいかない」と断られ、憤慨したそうです。

また、今話題の早野隆吾氏が福島のお母さんたちに向かって「あなたたちは被験者です。あなたたちのデータがこれからの日本に役立つでしょう」と言い放ったのを直接聞いたそうです。
甲状腺がんの患者さんとその家族はもちろん、母子避難の方々の声も聴いているそうで、その時々で感じる疑問や怒りが、その行動力の原点なのだと感じました。
おまけの話ですが、高校は浦和だっだので、30年前と変わらぬ喫茶店を見つけ、すごく懐かしかったとか。

牛山医師もかかわっていらっしゃる甲状腺がんの子どもたちへの経済的支援、健康調査などの活動をしている「3・11甲状腺がんこども基金」(手のひらサポート)にもご支援よろしくお願いします。

3・11甲状腺がん子ども基金
https://www.311kikin.org/
2019-03-12_01h19_48