報告:山のぼるさん(個人塾主宰)

昨年12月、私の主宰する塾の、ある学年の父母会でのこと。
いつもなら、子ども達の学習の様子が話の中心なのですが、この時は「学校」のことで1時間も話し合いが続き、学校の様子が活発に交流されたのです。
こんなことは、20年以上続けてきた私の「父母会」でも、初めてのことでした。

きっかけは、私が、2018年に出された2つの出版物の内容に、触れたことでした。
一つは7月末に出版された『ブラック校則』(東洋館出版社)。
2017年、生まれつき茶毛の高校生が、高校から黒染めを強要されたことで学校側を提訴。著者たちは、この訴訟をきっかけにプロジェクトを立ち上げ、データを蓄積し、そして本にしたのです。

もう一つは、雑誌『アエラ』12月10日の特集「親と先生682人の本音」です。
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この特集は、次のような文章で始まります。
昼時の小学校は誰もいないのかと思うくらい静かだった。
授業参観のため学校を訪れた女性(45)は、当時1年生だった娘の教室の後ろ扉をそーっと開けた。
すると、目にとびこんできたのは、全員が前を向いて黙々と給食を食べる姿。
私語は一切なし。
楽しいはずの食事の時間がなにかの訓練のように見えた。・・・・・
 
暗黙のうちに子供たちを縛る「学校スタンダード」という規則。
「黙食」と言う造語も、教育現場では当たり前に使われているようです。

父母会では、この後、意見が噴き出しました。
Aさんいわく

上の息子の中学では、一端登校したら、絶対に一時帰宅は許されない。先日、息子が弁当を忘れたことに気付き、先生に言って家に取りに戻ろうとしたら、ダメだと言われた。私は仕事に行くため電車の中にいたので、届けることも出来ない。電話で先生に聞いたが、理由もなく『決まりだから駄目です』と頑なに言われた。

また、BさんとCさんいわく

1年の時から、給食の時には喋ってはいけないと言われている。
給食時間が20分のため、喋っていたら食べ終わらないかららしい。


BさんとCさんは、公立ですが学校は違います。
しかし「黙食」は同様に行われているようです。

後日、別の学年の母親Dさんは、

給食では言われていないけれど、掃除の時には話してはいけないといわれているようです。

と話してくれました。

また、「体験授業」に参加された父親のEさんは、会話の中で、こんなふうに話して下さいました。
私の娘の小学校でも、黙って給食を食べさせられているようです。
家で母親に『おかしいんじゃないか?』って言ったら、
『あなた!子どもに学校の悪口が聞こえたらまずいでしょ!』と言われてしまって・・・・・
『悪口』を言ったつもりではないんですがね。

A・B・C・D・Eさんは、いずれもさいたま市内の小中学校に通うお子さんの保護者です。
この状況からすると、子ども達を縛る「学校スタンダード」は、さいたま市の小中学校では、すでに当たり前に習慣化されつつあるのかもしれません。

それ自身、憂うべきことですが、同時に問題なのは、こうした異常さが、現場から社会に発信されないことではないでしょうか。
学校の先生方の感覚がマヒしてしまっているのでしょうか?
子ども達の人権に対して、教師こそ、最も敏感でなければならない筈です。
先生方の多忙さが、一層「校則」や「学校スタンダード」を助長しているようです。

結果、子ども達の心はがんじがらめ。
あれもダメ!これもダメ!
子ども達が、こういう状況を当たり前の事として受け入れていったら・・・・と考えると、恐ろしくなります。
子ども達の成長は、教師と保護者の専有課題ではない筈です。
次代に生きる子ども達の成長の在り様は、社会全体で考えていくべき課題です。
昨年、クローズアップされた「教育」「学校」「教師」。
今年は、市民の力で、少しでも良い方向に進めていきたいものです。